Radiohead
Radiohead 。とてつもない進化を継続しているバンド。その過程をリアルタイムに聴いてきているので、このバンドへの思い入れは深い。
その進化は驚異である。
どの企業があのような進化を遂げつつ、商業的にも成功しているだろうか。
1〜2枚目はトリプルギターハードロックだった。トムヨークの心細いが美しい声と曲のよさ、ギターのアンサンブルに惹かれた。
トムヨークはアコースティックギターだけで勝負できるシンガソングライターに思えた。
ただ今から振り返ると、その時点では多くのギター中心のメロディーのよいロックバンドの一つだった。
彼らは3枚目でロックの表現を更に高めた。OKコンピュータはギターロックのアルバムとしては最高の出来だった。
しかし彼らは4枚目でギターを捨てた。「ギターの排除」と言われた。環境音楽、現代音楽を大胆に採り入れコンピュータを活用した大幅な方向転換を行った。
僕は一曲目の衝撃を覚えている。「なんじゃこりゃ」
しかし、コアであるトムヨークの歌力を生かした独自の「音像」に惹かれ取り憑かれた。彼らは彼らの「音像」を自由な手段で表現することにトライし、それを成し遂げつつあるんだと思った。
6枚目でギターがそこそこ 復活したものの、実験路線が続いた。
驚きはこんなにも変容したにもかかわらず商業的にも成功をおさめた点である。
この間、僕の耳は確実に開発されたといってよい。また彼らは、自由な発想で、商業的な制約を受けず、自分たちのやりたいことをやって、しかも儲かる、という立ち位置を確立したのだ。
それ自体、奇跡だと思う。
そしてロックとかジャズといったカテゴリーに属する数々のバンドではない、「レディオヘッド」という新しいカテゴリーを確立したのだ。
彼らは、並行してそれぞれのメンバーがそれぞれ独自の音楽活動を地道に行い、自らの音楽スキル、クリエイティビティーを高める取り組みをした。
もうネタ切れ?という心配をよそに彼らは、そうした独自活動をバンドにフィードバックして進化し続けた。
そして7枚目ではギターを再び大きく復活させ原点回帰したものの、その頃になると彼らは普通のギターロックバンドではなくなっていた。
In rainbow はギターを使ったシンプルな構成のロックというフォーマットの音楽はここまで出来るんだ、ここまで表現できるんだ、という可能性を提示した意欲作と思える。
8枚目。そして9枚目の今回の新作。
彼らが自らの音楽活動の集大成モードになっていると感じるのは僕だけだろうか。ジョニーグリーンウッドのクラッシック作曲家の力を、それぞれの楽曲に生かし、表現の幅を確実にバージョンアップさせている。
9枚目の今回の新作で一番感じるのが、各々の楽器、コーラス、ボーカルを一番よい鳴らし方で鳴らし、それぞれの楽曲を深くしっかり表現しているな、という点である。
目をつぶって聴くと、音が三次元の音像としてイメージされ僕の心を震わせる。
彼らは、もはやどのバンドが到達できない地点まで来てしまったのだと感じた。